太陽光発電 料金の動きをチェック!

汚れだって落ちないに越したことはないし、冬の寒さもやわらぐ。
かくして、天井が張られ、畳と障子・フスマと天井に天地左右を囲まれた日本の部屋が完成する。
そして、この部屋に床の間が組み込まれて、書院造りが生まれる。
寝殿造りから書院造りへの進化。
天井は、屋根裏の骨組みを汚れの面でも美的にも隠すために生まれたわけだが、では、現在、屋根裏なんかないマンションで何を隠しているんだろうか。
天井をはいでみるとわかるが、現代の天井裏には電気の配線、空調の配管、テレビの引込線などなどがひしめいている。
昔は骨を隠していたが、今は配線配管といった内臓や神経を隠している。
昔も今も、自分自身に重要な意味があるんじゃなくて、他のものを隠すために存在する。
天井は住まいのフタなのである。
クサイモノには天井。
より上に、そしてくまなく明るく(照明)はじめて蛍光灯のついた日のことを忘れられない。
四十年ほど前の中学生の時だった。
信州の田舎の家の八畳間の天井に、村の電気屋から買ってきた一本管の蛍光灯を取り付け、プルスイッチのヒモを引くと、部屋中に光が充満し、家族の間から歓声が上がり、拍手拍手。
それまでの陣笠スタイルの電灯にくらべ、光の質がずっと高級で都会的に思えたのはどうしてだろう。
おそらく、自然の火に近い電灯の赤っぽい光より、青白い蛍光の方がずっと科学的でより進んだものに見えたにちがいない。
なんせ、アトム、ウラン、コバルトのアブナイ三兄弟が平気で町中を飛び回っていたような時代である。
誰がつけたか知らないが、蛍光というネーミングもうまかった。
「蛍の光、窓の雪」、電灯より勉強ができるような気がする。
光量もくらべものにならず、床、壁、天井のそこここにわだかまる陰影を、青白い光の雑巾ですみずみまで拭き取ってゆく感じ。
とりわけ天井が明るくなり、杉の板にハエの黒い7ンが一面についているのに驚いた。
それまでの天井画は陰影の巣窟で、まともに目にしたことなどなかった。
戦後の家庭電化の動きの中で、一番建築的に影響の大きかったのは、蛍光灯の導入にちがいない。
以来、天井の中心に位置する蛍光灯は、一本が二本に、二本が四本に、時には直線から円環へと拡大充実の道をひた走り、日本の住宅は、白い光に満たされてゆく。
そして、気がついてみると、欧米とはまるで違う室内の光環境に到達していた。
欧米では、住宅の光源に蛍光灯を使うことはまずない。
日本のように光源を天井につるしてそこから部屋中にダイレクトに光を放射することもしない(大空間は別)。
間接照明にするか、直接照明の時も壁に取り付ける。
必要なところにはスタンドかそこだけのペンダントランプにする。
蛍光灯を使わず、天井の中心から放射せずであるから、いきおい部屋は暗くなるが、向こうの人はそれが家庭の光のあり方と信じて納得している。
だから、日本の家にくると、むやみ(無闇)に明るくて落ち着かないという。
私たちは向こうの家屋やレストランに行くと、うっとうしく思う。
蛍光灯にしたらきっと天井一面にハエのフンが……と私なんかは思って、料理の味が少しまずくなる。
どちらがいいということでもないが、それにしてもどうして日本の家は、これほどすみずみ明るくなってしまったんだろうか。
技術的には、蛍光灯を使い、しかも天井の中心に取り付けたせいだが、そのような使い方を好んだのには深い心理的、歴史的な背景がある。
まず、電灯、蛍光灯の導入以前の日本の建築の闇の深さについて思い出してほしい。
暗かった。
まことに暗かった。
私は、小学二年生まで、江戸時代に作られた茅葺きの家に住んでいたが、学校から帰ってくるとまず一歩入り、しばらく仔んで、目を暗さに慣らしてから中に入った。
どうしてそんなに暗いかというと、まず、軒の作りに理由がある。
雨を防ぐため、軒を深く差し出すから、そのぶん光が遠くなる。
次に部屋の中のインテリアに問題がある。
天井と床の二つの面のうち、天井の方が黒っぼく作られていた。
杉などの板は、数年するとアクが表に浮き、ハエがフンを付け、さらに悪いのはイロリの煙で、イロリの上方は吹き抜けになっているが、抜けきらない煙が天井のある部屋にも回ってくる。
昔の家に行くと、木の部分は黒ずんでいるが、天井も例外ではない。
入ってきた光が天井に反射して上から光が落ちてくるということが不可能。
一方、床の面ではどうかというと、畳である。
畳は斜めから見るとよくわかるが相当光を反射して明るい。
時々、畳替えをするから、古びて黒ずむこともない。
深い軒の下をくぐりぬけて来た外光は、部屋にすべり込んで畳を照らし、そこで力尽きる。
陽が落ちてからも事情は変わらない。
灯されるのは行灯で、ほのかな光が照らし出すのは畳の面だけ。
日本の住まいは、深い軒に遮られてただでさえ光量が少ないうえに、天井が暗くて床が明るいという光の逆立ち状態だったのである。
住宅だけでなく、お寺のような大建築でも変わらない。
本堂には仏様がいて、その上は高天井になっているが、上から光が注いでくるわけではなく、軒から水平に射し込んできた光が、畳の面をすべり、下から仏をボーっと明るくする。
一般に日本の寺は光の演出をしないが、私の知る限り二つの例外がある。
兵庫県の浄土寺浄土堂は、堂内の高天井まで届く大きな阿弥陀仏の背後の壁をオープンにしてあって、池に反射した光が背後から射し込む。
もう一つは西本願寺の飛雲閥で、一階大広間の上段の間の背に、普通なら壁に山水でも描くべきところ、障子がはめてある。
貴人が座る上段の背をヘラヘラの障子にしてしまうのは異例で、これまで謎とされているが、飛雲闇が浄土堂と同じく真西を向き、その背後に同じように池があることに気づくと謎は解ける。
浄土堂が西方からの光を取り入れようとしたのと同じ浄土の演出なのだ。
飛雲閥の掛合は、阿弥陀様じゃなくて、生き仏としてあがめられる本願寺門主が座った。
例外的に光の演出をする二つの仏教施設でも、光は上からじゃなくて、池に反射して斜め下からすべり込んでくる。
上からでない限り、わだかまる闇を払うのは難しい。
せいぜい仏様や天蓋を金ピカにして、少ない光で明るく見せるしかないのである。
それにくらべ、ヨーロッパは、太陽の光が素直に上から建物に入ってくれた。
住宅の場合、軒の出は無いか浅いから、高い位置に開いた窓から光は直に斜め上から射し込んでくれる。
宗教建築の場合はもっとダイレクトで、真上、もしくは真上に近い斜め上から降り注ぐ。
ローマのパンテオンは、ドームのてっぺんに開いた大穴から、ドッと入ってくる。
時には雨も。
ゴシックの教会もステンドグラスの五彩の光を注ぐ。
向こうの宗教では、堂内の高天井は神の支配する天空界の象徴とされるから、上から下に向かって光が降り注ぐのは不可欠な演出なのである。
光は神の威光でもある。
日本でも光は阿弥陀様の威光と考えられていて、阿弥陀の手のひらから出た光に導かれて極楽往生できることになっているのだが、実際にそのことをどう演出したかというと、往生際の人の枕元に阿弥陀棟の絵を描いた屏風を立て、その手のひらから糸を引きだして握らせたりしている。
まことに即物的というか場当たりというか、これはこれでにくめない。
私も将来、老人力を使い切った果てには、これで往こうか。
幕末、明治初期は、日本人が西洋館にはじめて入った時、その明るさに驚いた。
床だけじゃなくて、天井までちゃんと光を帯びているではないか。
そして、それまでのあまりの暗さへの反動が吹き出した。

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